『聞く技術 聞いてもらう技術 (ちくま新書 1686)』
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(著) 東畑開人
出版社 :筑摩書房(2022/10/11) ISBN:4480075097
第19回大佛次郎論壇賞、紀伊國屋じんぶん大賞2020 W受賞
『居るのはつらいよ』の東畑開人、待望の新書第一作!
聞かれることで、ひとは変わる――。
カウンセラーが教える、コミュニケーションの基本にして奥義。
小手先の技術から本質まで、読んだそばからコミュニケーションが変わる、革新的な一冊。
「「聞いてもらう技術」? ふしぎな言葉に聞こえるかもしれません。その感覚をぜひ覚えておいてください。このふしぎさこそが、「聞く」のふしぎさであり、そして「聞く」に宿る深い力であって、この本でこれから解き明かしていく謎であるからです。」
――本文より
【目次】
まえがき
この本の問い/対話が難しい時代に/「聞く」を回復する/聞いてもらう技術?/いざ、「聞く」の世界へ
聞く技術 小手先編
1 時間と場所を決めてもらおう/2 眉毛にしゃべらせよう/3 正直でいよう/4 沈黙に強くなろう/5 返事は遅く/6 7色の相槌/7 奥義オウム返し/8 気持ちと事実をセットに/9 「わからない」を使う/10 傷つけない言葉を考えよう/11 なにも思い浮かばないときは質問しよう/12 また会おう/小手先の向こうへ
第1章 なぜ聞けなくなるのか
届かなかった言葉/社会に欠けているもの/聞くは神秘ではない/「対象としての母親」と「環境としての母親」/ほどよい母親/「対象としての聞く」と「環境としての聞く」/失敗とは何か/痛みを聞く/聞くのが難しい/首相に友達を/聞くはグルグル回る
第2章 孤立から孤独へ
連鎖する孤独/孤独と孤立のちがい/孤立とはどういう状態か/手厚い守り/個室のちから/メンタルヘルスの本質/他者の声が心に満ちる/安心とはなにか/孤立したひとの矛盾/一瞬で解決しない/心は複数ある/第三者は有利/個人と個室の関係/象牙とビニール/「聞いてもらう技術」へ
聞いてもらう技術 小手先編
日常編/1 隣の席に座ろう/2 トイレは一緒に/3 一緒に帰ろう/4 ZOOMで最後まで残ろう/5 たき火を囲もう/6 単純作業を一緒にしよう/7 悪口を言ってみよう/体にしゃべらせる ― 日常編まとめ/緊急事態編/8 早めにまわりに言っておこう/9 ワケありげな顔をしよう/10 トイレに頻繁に行こう/11 薬を飲み、健康診断の話をしよう/12 黒いマスクをしてみよう/13 遅刻して、締切を破ろう/未完のテクニック――緊急事態編まとめ
第3章 聞くことのちから、心配のちから
心に毛を生やそう/素人と専門家のちがい/初めてのカウンセリング/2種類の「わかる」/年をとってわかること/それ、つらいよね/世間知の没落/シェアのつながり/世間のちから/世間知と専門知の関係/心配できるようになること/カウンセラーの仕事は通訳/診断名のちから/バカになる/世間知の正体/理解がエイリアンを人間に変える/時間のちから
第4章 誰が聞くのか
対話を担う第三者/食卓を分断する話題/「話せばわかる」が通用しないとき/幽霊の話/聞いてもらおう/第三者には3種類ある/聞かれることで、人は変わる/当事者であり、第三者でもある/聞く技術と聞いてもらう技術
あとがき――聞く技術 聞いてもらう技術 本質編
これは『聞く力』の進化版!
悔しいけど、たしかに進化して、そして私たちは昔の心を取り戻す。
――阿川佐和子さん
「聞く技術 小手先編」、おおむね「聞く技術」として読者が期待しているようなことが書かれている。でもあくまで導入的位置付け。小手先を無視しない姿勢は共感が持てる。小手先のいいところは元気になるところ、という指摘も頷ける。
第1章「なぜ聞けなくなるのか」。私たちは日常的に聞くことができている。しかし危機的状況に陥ると「聞く」が不全を起こす。そのときにこそ「聞く」が必要なのだが、簡単ではない。その問題の中核には孤独があることが確認される。
第2章「孤立から孤独へ」。孤立と孤独の違いについて。ひとりだけども、心の中の悪しき他者の声に晒されているとき人は孤立していて、心の中の自分の個室にこもれているときは孤独と言える。いくつか引用。
"孤独の前提は安定した現実です"
"心の中に悪い他者がウヨウヨしているとき、現実にまわりにいる他者たちも悪いやつに見えてしまいます"
"心の変化は劇的な一瞬でもではなく、見守られながら流れる地味な時間の蓄積で起こるものだからです"
まだ途中だが、これは人間の複雑さを取り戻す(あるいは再承認する)動きと言えるのかもしれない。効率化や数値化されえない心の複雑さを。
幕間「聞いてもらう技術」。端的にいえば、周りにどうしたの?と言ってもらうための方法。それは、我慢しつづけるのではなく、少し表現する(サインを出す)ということ。でもってその成否は、サインの受け手の存在に関わってくる。
ここでは、誰か1人の頑張りだけでは解決できないという問題の構造が示されいる。関係性にこそ答えはあるのだろう。
第3章「聞くことの力、心配のちから」。世間知としての「聞く」で、僕たちの心は安定を保っている。その知に限界が来たとき、専門知の必要性が生まれる。ただし、専門知に囲い込むのではなく、世間知が再び「聞ける」ようにするために機能するのが望しい。日常的な「聞く」をいかに回復させられるか。
第4章「誰が聞くのか」。2人だけではなく、第三者を交える対話。この第三者は、サードプレイスになぞらえてサードパーソンなどと呼んでもいいかもしれない。当事者ではない、つまり出来事として前景化しない人々。その大切さが見失われている。で、結局誰が聞くのか(続
誰でもいいし、誰もがそうであってほしい、というのが著者の願いでもあろう。もちろん、そこには読者というひとりの人間も含まれる。誰もが聞くと聞いてもらうの循環の中に入ることで、近代の固定的な構図が動的なそれへと変じていくのだろうなと感じた。
聞くことの当たり前と難しさを確認しながら、私たちが何に注意を払えばいいのかが示されます。循環的な構図の問題は解決が容易ではないですが、しかし何気なく聞くことがその手助けになるのかもしれないと感じさせてくれます。
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